市松人形 12号 無銘人形
戦後間もない物質の乏しい時期の市松人形です。
ファーストオーナーに大変可愛がられた様子で帯にお手紙も入っておりましたが当方で供養させていただきました。
昭和20年代後半の新聞が巻かれていました。胴体の芯は藁束、ぐるりの布も賄えなかったのか前後に四角い布が貼られ胸とお尻の上下のパーツが繋がっていました。無銘でした。
藁束を除去しふいごを入れ布で巻き、その上に包帯を巻いております。プップッと囀ずるように可愛く鳴きます。
髪の毛は栄養の良くない時期と推測される人毛にお団子が貼られていましたが、お団子の劣化が激しく剥がしてしまいました。よって糊の痕があります。
大変良い人形に化繊の簡素な着物、お団子は正直似合わなくて、しかし数を売るには仕方なかったのか…とも考えたりして。
人形師の腕は確かと思います。戦後の混乱のなか、色々な事情があったのではと推測いたします。
皆さんが良くご存じのあの人形師の手によるものと当方は確信しております。それ以外にどうしても考えられないのです。
とても気に入っておりますが、次の方にご縁がありますことを願ってもおります。
市松人形 12号 無銘人形